椿原正和先生(教育アドバイザー)による研修会/三浦小学校との合同研修
2023年9月23日 06時05分
今回はすごく長文です。内容が濃すぎてすみません!!
■椿原先生による2・3・4年生への授業は、持ち物の確認から入りました。
鉛筆、消しゴム、赤鉛筆、定規が確実に用意できているかという確認です。
鉛筆の確認といっても、その長さや芯がちゃんと研いであるかといったことまでも確認しています。
この行為一つとっても、「一人の例外もなく全員」に力をつけるという、椿原先生の覚悟が感じられます。
持ち物の確認の後は、音読教材「話す・聞くスキル」から入りました。
「いっちゃんち」という教材です。
椿原先生の範読を聞いた後は、自分の速さで読んだり先生と交代で読んだりと、リズムとテンポのある授業の中で、自然と声が出るようになってきました。
よい授業には心地よいスピード感があるとか、リズムとテンポが感じられるとか言われますが、この場面一つとっても、椿原先生の授業の腕のすごさを感じることができました。
プリントを子どもたち一人ひとりに配る場面がありました。
それを両手で受け取りながら、
「ありがとうございます。」
と声に出します。
社会に出て役に立つことを一つ一つ教えていきます。
こうしたことは、一年間の始めにしっかりと教えておけば、1年間どころか一生ずっとその子を支えてくれる習慣となりますね。
プリントの教材は「赤とんぼ」でした。
「先生が読むところを指でなぞりながら聞きなさい。」
椿原先生の指示どおり指でなぞる子どもたち。
こうすると子どもたちがちゃんとついてきているかどうか、一目で分かります。
丸付けの場面です。
椿原先生は、授業の中で必ず全員に丸付けをする場面を設けるそうです。
それが、すごいスピードなのです。
一人あたり2秒もかかっていないくらいでしょうか。
持ってきたときに、あれこれ子どもに話すようなことはありません。
短く声をかけながら丸を付けています。
ですから、子どもたちは渋滞することなく、どんどん動いて椿原先生の前に出て行く感じです。
教室の中に列ができると学級崩壊につながっていくと、尊敬する先輩に教わってきました。
列ができる中で子どもたち同士がおしゃべりし、トラブルになり、それが日々積み重なっていくのだと思います。
そういえば授業の上手な先生は、列ができないように上手にマネジメントしています。
私たちが気を付けたいところです。
「赤とんぼ」を音読させる場面のことです。
①(先生による)例示
②全員に読ませる。
ここまででは力が付かないのだそうです。
全員に読ませると、読めているような錯覚にとらわれますが、実は一人一人の実態は様々です。
椿原先生は、その次に「一人ずつ」音読させて、緊張場面を作り出しました。
「緊張したでしょ!」
「はい。」
小さくうなずく男の子。
「緊張したときにしか成長しないんですよ。」
頑張った子たちを一人一人、力強く褒めていました。
授業中は意見の交流があり、子どもたちの多様な意見がどんどん出されました。
根拠があればどれも認められるという、「正解」ではなく「納得解」という考え方がぴったりの授業でした。
■4・5・6年生は、「ごんぎつね」を教材として、物語文の読み取り方を学びました。
ごんぎつねは、18ページにもわたる長文の物語です。
これをどう読み解いていくのか。
非常に興味深いところです。
全体が幾つの場面からなっているのか確認をし、椿原先生は、その中で1の場面を取り上げることを告げました。
ごんの性格を、文章中の言葉を使って言い表す場面です。
椿原先生が提示したコンテンツには、6マスと4マスの枠が出されています。
子どもたちが見つけ出すヒントになっています。
それと同時に答えがぶれないことにもなります。
明確に限定されるわけです。
ごんがした「いたずら」について考察する場面がありました。
ここは、子どもたちも私たち教職員もハッとさせられたところです。
いたずらの概念が今と違っているのです。
詳しくは書きませんが、「当時」のごんの行動は、「今」でいういたずらを越えているのです。
ここを正しく理解することは、その後のごんと兵十の関係を考えていく素地となります。
ここからが今日のメインです。
ごんや兵十の言動をもとに、1の場面を読解していくのです。
①ごんは兵十をのぞいた。
②兵十はびくをおいた。
③ごんは魚をなげこんだ。
④兵十は……。
というように、つなげていくと、1の場面がどのような話であったかがすごくよく分かります。
これが数字だけでなく、「ごん」「兵十」が図で示されている(ワークシート)ので、視覚的にパッと目に飛び込んできます。
これをもとに、要約文を作っていきます。
「兵十がとった魚をいたずらで逃がしたごん。」
最後に中心人物を配置することで、要約文が確定します。
(こうすることで討論も可能になります。)
この図をすべての場面で作り一覧にすると、クライマックスがどこなのかが一目で分かります。
本当に画期的です。
最後に椿原先生は、なぜこの方法を用いるのかを分かりやすく話してくださいました。
18ページもある話が、この1枚になることがどういった意味を持つのか。
6年生の女の子たちが、うんうんうとなずいているのがはっきりと見えました。
「4年生で勉強したときには考えもしなかったことばかりだった!」
授業後の6年生の子たちの言葉です。
この椿原先生が開発された画期的な方法は「図読法」(ずどくほう)といいます。
5,6時間目の授業は、三浦小、結出小の教職員だけでなく、両校の学校運営協議会委員の方々が合わせて7名ほど来られていました。
教職員の授業力を向上させるため、子どもたちに力をつけるために、学校現場ではどういったことをしているのかを知っていただくよい機会となりました。
■子どもたちが下校した後は、両校の教職員を対象にした椿原先生の講話です。
「情報社会における読解力」をテーマに、お話しいただきました。
子どもたちに情報の取り出し方を、スキルとして教えることで、他の教材についても転用できるようになる。
まさにそのとおりだと思いました。
椿原先生は、「5%の授業改善」と言われていました。
椿原先生の言葉をお借りすると、宇和島市の優秀な先生方が5%の授業改善をすることで、子どもたちが力を発揮できるようになるのです。
その5%を必ずやり遂げたいと思いました。
基本となる部分をしっかりと身に付けさせないと、その先にある探求型の学習ができるようにはなりませんから。
全ては未来を生きていく子どもたちのために!
椿原正和先生、遠く熊本から宇和島市に来ていただき、本当にありがとうございました。
本校の教育アドバイザーである椿原先生は、このあと12月にはオンライン、2月には来校され、本校の研修にお力をお貸しいただく予定です。