林健広先生による遊子小・結出小の合同研修会
2024年1月15日 18時31分
遊子小と結出小の合同研修会を開催しました。
子どもたちの交流学習と私たち教職員の授業技量を高めるための研修の両方をねらいとした合同研修会です。
講師は、山口県優秀教員(県教育委員会から表彰)である林健広(たけひろ)先生です。
というわけで、今回は、専門的な内容もかなり入ったブログです!
■林先生にはまず、4時間目に、2,3年生の6人を対象に道徳の授業をしていただきました。
少し早めに教室に入った子どもたちと林先生。
林先生は、「話す・聞くスキル」という教材の「ためになることわざ」を子どもたちにやっていただきました。
「話す・聞くスキル」は結出小の子どもたちが毎日取り組んでいる音読教材です。
日本語の持つ美しい響きを体感し、名詩、名文を知らず知らずのうちに暗唱できるようになる、優れものの教材です。
2・3年生の子どもたちと視線が自然に合うように、林先生はご自身も椅子に座り、ぐっと子どもたちに近づきます。
林先生「先生の後に読んでね。『ためになることわざ』」
子どもたち「ためになることわざ」
林先生「○○くんの声が一番いいね! ○○くんに負けないように、声張っていくよ! ためになることわざ。」
子どもたち「ためになることわざ。」
林先生「いい声だねえ! いい声だ!! 早起きは三文の徳……」
満面の笑みで音読をする林先生につられて、子どもたちはとっても楽しく音読に取り組みました。
ちょっとした声の変化を見付け、その瞬間を逃さず具体的に褒める林先生のペースにどんどん乗せられていく感じでした。
■さて、今回扱った道徳教材は「おれたものさし」(2年)です。
「まずね、ちょっと前に来て!」
すぐに教科書の話に行くのかと思いきや、林先生が始めたのはフラッシュカードです。
「先生の後について言ってね、『きちんとことばで それやめて』」
「きちんとことばで それやめて」
「いい声だなあ……『○○しちゃって ごめんなさい』」
「○○しちゃって ごめんなさい」
林先生が使っているのは、望ましい行動を分かりやすい絵と言葉で表現したフラッシュカードのようです。
みんなで一緒に言った後は、個別にも練習します。
先生「きちんとことばで」
子ども「それやめて」
「上手! 声もいいよ!!」
ここでもどんどん褒めながらテンポよく進めていきます。
■「教科書、手で持ってごらん。」
「姿勢がいいな。○○くん!」
ここでも子どもたちの動きを褒めています。
褒めることで、望ましい行動をどんどんインプットしている感じです。
「『いじめのないせかいへ』って書いて」
子どもたちが鉛筆を持って書き始めます。
6人ですが、作業の時間差が出ました。
すぐに書き終わった子を、林先生が指名して言いました。
「○○くん、読んでみて。」
「いじめのない世界へ」
「○○さん、読んでみて。」
「いじめのない世界へ」
「上手だね。」
「○○くん、読んでみて。」
「声がいいね!」
読ませている間に、遅れている子が追い付いてきました。
空白となる時間が生じないように工夫されていたのです。
■「日本の中で、1年間にいじめは何回くらいあると思う? 毎日(いじめが)あったとしたら365回だね。」
考える際の足場となる数字をサラッと示す林先生。
こうしたところにも一つ一つ子どもへの配慮があります。
林先生は、しゃがみこんで目線を子どもたちに合わせ、優しく笑顔で話し掛けます。
とはいえ、子どもたちは緊張のせいか、なかなか口を開こうとしません。
林先生は、前と後ろの子がペアになって話すように促しました。
子どもたちは少し動こうとするのですが、なかなか話し合いになりません。
「そうか、恥ずかしいんだな。よし、机をくっつけよう!」
林先生の指示で、子どもたちは隣同士、机をくっつけました。
いじめの数を黒板に数字をかき、子どもたちに見えるように示しました。
詳しくは書きませんが、この示し方にも工夫がありました。
いわば、見せ方の工夫です。
「せっかくだから、先生のところにおいで。教科書もって。」
林先生は子どもたちを自分の周りに集めました。
子どもたちはいそいそと林先生の周りに集まります。
■ここまで約9分。
林先生は、ずっとにこやかな表情で授業していることに気が付きました。
授業開始からここまで、林先生は終始笑顔なのです。
子どもたちが意見を言えずに困っていたときも、一切ぶれることなく笑顔なのです。
(このままいくと、授業のことだけで長くなるので、ここまでとします。)
■前に集めたり、座席に戻したり、ペアで話させたり、集団で話させたり、周りの先生たちのところに話しに行かせたり……。
林先生は子どもたちをどんどん動かし、ちょっとした動きも見逃さず、褒め続けました。
すると授業終盤には、輪になった子どもたちが、自分たちだけで話し合うようになったのです。
これには感激しました。
■林先生は、まとめをした後、フラッシュカードを再度取り出しました。
授業の始めに使ったフラッシュカードです。
林先生「いじめられた人はこれを言えばよかったんだよ。『きちんと言葉で』」
子ども「それやめて」
最初のフラッシュカードの見え方が変わった瞬間でした。
■「今日お勉強して、お勉強になったなあってことをプリントに書いてごらんなさい。」
林先生が言うと、子どもたちは即座に座席につき、書き始めました。
もちろん、発表するときは子どもたちが進んで挙手して、次々と行われました。
授業が楽しく充実したものである証拠ですね!
教師に授業力があれば45分の中で子どもたちはこのように変わるのだということを、目の前で見せていただいた気がします。
■午後は、5・6年生を対象にした算数の授業でした。
令和3年度の全国学力・学習状況調査の問題の中から、正答率が62.5%だった問題を扱いました。
図の中にAコースとBコースが示されています。
「Aコースの道のりは、Bコースの道のりより何m短いですか。求め方を式や言葉を使って書きましょう。また、答えも書きましょう。」という問題です。
■林先生はこの問題に突入するのではなく、まず助走となるような問題を用意してくださっていました。
その問題を解きながら、自然と説明の型を身に付けていく感じで授業は進みます。
式についての説明の文章を作るだけでなく、できた人同士で説明し合う場面が何度もありました。
一人やって終わるのではなく、次々と相手を替えながら説明し合っていくことを、林先生は指示されました。
「いろんな人の脳みそを借りるんだ。」
と林先生は言われました。
子どもたちは、何度も何度も自分の考え方を説明したりいろいろな友達の説明を聞いたりしました。
何度も何度も繰り返すうちに、徐々に説明の型が刻み込まれていくのです。
■この授業でも林先生の笑顔と褒め続ける姿勢は一切変わりませんでした。
ちょっとした返事を取り上げ、「いい返事だね」「いい声だね」と褒める。
すると、今度の返事はなぜかさっきよりしっかりとした返事になっているのです。
もちろん、それだけではありません。
「読んでいない人がいますからもう一回読みますよ。せえの!」
とやり直しを指示する場面もありました。
もちろん、笑顔で!
そしてしっかりとできたら、そこで力強く褒めていました。
■この時間は、「まず、次に、だから」という3つの言葉を使って説明していくということを学んだのですが、これを指導ではなく授業で行っているところが林先生のすごいところだと思います。
専門的な言い方をすると、「いいかい、こういうときはこうするんだよ」と教え込むのが指導。そうではなく、「子どもに気が付かせて、知らず知らずのうちにやれるようになっていくように組み立ててる」のが授業です。
■授業の感想発表の場面で、チャイムが鳴ってしまいました。
「チャイムが鳴りましたから、座ってください。」
林先生はそこで授業をスパッと終わりました。
時間をきっちり守られたのです。
「時間をオーバーして授業を終わらせるのは、相撲でいうと土俵を出てから投げ飛ばすようなものだ。」
授業も学級経営も大変上手だった尊敬する大先輩から。こう言われたことを思い出しました。
おそらく林先生も同じような考えなのだと思います。
■子どもたちが下校した後、遊子小、結出小、そして他校から来られた先生方を対象に講話をしていただきました。
遊子小の教育環境が非常に理にかなっているとおっしゃっていました。
林先生は先日、アメリカのボストンで特別支援教育の非常に進んでいる学校を視察してこられたそうです。
その学校と遊子小に非常に共通点が多いのだそうです。
我が結出小学校も学ばねばなりません!
■道徳や算数の授業の組み立ての裏付けとなる情報を、惜しみなく教えてくださいました。
例えば、望ましい行動を子どもたちが身に付けるのに、かるたやフラッシュカードは非常に有効なのだそうです。
学習指導要領の中に書かれている重要な事柄についても、分かりやすく教えてくださいました。
こうして解説してくださると、何となく読んでいた文章から具体的な行動が浮かび上がってきます。
■探究型の授業についても話してくださいました。
探究型とは、自ら問いを立てそれに対して答えていく学習です。
課題に対して子どもたちが情報を集め、整理・分析してまとめていくスタイルの授業です。
子どもたちが主体的にこれを行うことで、今求められている力を高めることになるといわれています。
林先生曰く、小学校における探究型の授業は、総合的な学習の時間や社会科から入るといいのだそうです。
林先生の学級(6年生)では、算数でも探究型でやるときがあるそうですが、一斉授業でしっかりと子どもたちに力を付けてあり、さらに総合的な学習の時間や社会でも実践を積み重ねてあることが大前提となるようです。
イメージとしては4月から9月までに一斉指導でたくさんの成功体験を積ませ、徐々に先生が手を離していくような感じでしょうか。
私たちが取り組む際も、ただ単に「探究型の授業をやればいい」として取り組むのではなく、子どもたちにしっかりと力を付けてから順序だてて行わないいけないなと思いました。
■フラッシュカードの実技練習の時間もあり、林先生の講話はあっという間に終わりました。
飛び込みの授業2本、そして講話とたっぷり学ばせていただきました。
隣の県とはいえ、山口県からはるばる海を渡ってきてくださった林先生、本当にありがとうございました。
学んだことを生かして、それぞれの学校の子どもたちに力を付けていきます!