教育アドバイザー(学力向上)椿原正和先生の研修会(遊子小との合同研修)
2024年2月16日 15時16分
本校の教育アドバイザー(学力向上)である椿原正和先生(熊本県NPO教授法創造研究所理事長)をお招きしての研修会。
今年度4回目(うち1回はオンライン)の研修はお隣にある遊子小学校との合同の研修会として行いました。
■4時間目 1~4年生 国語 音読など基本的なことを確認する授業
「持って見せてください。」(以下、文責 信藤)
そう言って、椿原先生は立っている子どもたちに、鉛筆の芯を上にして見えるように持たせました。
「合格! 合格!! 合格!……。」
全員が合格となりました。
机の上のどの位置に鉛筆を置くのかを図で示し、
「では、赤鉛筆を出します。」
と指示。
同様に消しゴム、定規も確認されました。
椿原先生によると、これらはアセスメント(児童の状況を客観的に分析する作業)なのだそうです。
持ってきているかどうか。
鉛筆の長さはどうか。
芯は研いであるか。
ものさしや消しゴムはシンプルなものか。
それらから子どもたちの状態を的確に見抜いていくのだといいます。
スクリーンで自己紹介の仕方の型を示されました。
① 私の名前は( )です。
②( )小学校の○年生です。
③すきな(食べ物・動物・スポーツ)は( )です。
④よろしくお願いします。
自分に合った言葉を入れ、確実に自己紹介ができるようにしているのです。
使われているフォント。
文字の大きさ。
( )にしている部分と選択できるようにしている部分の違い。
行の頭に番号を打ってあることなど、この表示されたコンテンツ一つとっても学びがたくさんありました。
『話す・聞くスキル』の「付け足し言葉」のプリントを配ったあと、この時間に扱う部分を示し、赤鉛筆と定規で囲ませました。
この囲ませ方一つとっても実に多くの要素が見て取れます。
まずどこに線を引かせるか。
定規の持ち方をどのように教えるか。
初対面の子どもたちも指示を確実に理解しながら素早くついていきました。
一通り囲ませた後、椿原先生は子どもたちにプリントを持ってこさせました。
かなり早い段階での丸付けです。
低・中学年の子どもたちは、椿原先生から○をもらうことで一気に安心したように見えました。
「先生の後について読んでください。驚き桃の木さんしょの木。」
「驚き桃の木さんしょの木」
「今の口の2倍開けてください。」
ここで椿原先生は言葉だけの指示ではなく、実際に大きな口を開けてやって見せました。
口を開けることによって声の調子が変わることが明確に分かります。
「口を開けた方が脳にぐっと刺激が入るんです。」
なぜそうするのかを短い言葉で説明する椿原先生。
こうしたちょっとした場面での趣意説明が絶妙です。
子どもたちを前に出したり、列で指名したり、読ませる部分を行ごとに交代したり、上下で分けたり、それを入れ替えたりするなど、様々な読ませ方をしていきます。
気が付くと暗唱できるレベルになっていて、子どもたちは楽しくてたまらない雰囲気になっていました。
変化のある繰り返しによる熱中です。
子どもたちの声は、授業が進むにつれて大きくなっていく感じがしました。
この後、『スイミー』のある場面を用いて、主語と述語の関係について考えました。
○で囲んで線で結ぶ作業をしながら、視覚的に内容が整理されていきます。
ここでも、いきなり囲ませるのではなく、一度指で押さえさせてそれからの作業です。
エラーしないですむから子どもたちは安心でした!
リズムとテンポのある授業の中で遊子小と結出小の子どもたちはどんどん声を出しながら、授業の中で活躍していきました。
■5時間目 5・6年生 国語 全国学力・学習状況調査 令和4年度 大問3「6年生としてがんばりたいこと」
大問3の中にある記述式問題は、正答率が37.7%(公立小学校)という難しさです。
「あなたが島谷さんなら」という設定で答えを書かせる問題。
中学校でよく見られていた「あなたが○○なら(どのように書くか)」という問い方、いわゆる「あなたなら」問題が、今は小学校の問題にまで下りてきているのです。
全国学力・学習状況調査の問題は、国家的な課題を踏まえて作られているので、記述式問題一つにも、これからどいうった力を付けていかねばならないのかということが見て取れます。
さて、この記述式問題には、条件が3つあります。
そのうち3つ目の条件が、「60字以上、100字以内にまとめて書くこと」というものなのですが、ほとんどの子たちはその文字数に気を取られてしまい、肝心の前2つの条件を正確に踏まえて書くことができないのだそうです。
全国学力・学習状況調査の結果分析からも、条件が1つならそこそこできるのですが、条件が2つになるとぐんと正答率が下がっているということが分かります。
子どもたちはこの二つの条件を正確に理解し、正確に処理しなくてはなりません。
しかも、「限られた時間の中で」です。
椿原先生によると、日本の先生たちの授業はとても質が高く、子どもたちにも力が付いているといいます。
それを限られた時間の中で発揮するためのスキルが十分でないために、正しく答えられないということなのだそうです。
先生の言葉を借りるなら、「情報を処理するスキル」が不足しているといえます。
その「情報を処理するスキル」が、○で囲んだり線で結んだりする作業だという位置付けなのです。
その作業をすることで、見えなかったことがクリアに見えてくるから不思議です。
(学習指導要領にも本文中に書かれています。)
余談ですが、椿原先生はこうした指導法を、特別支援学級の子どもたちや勉強が苦手だという子どもたちからいくつものヒントをもらいながら開発、改善してきたのだといいます。
つまり、自分の授業の足りないところは子どもたちが教えてくれたというのです。
この考え方、本当に勉強になります。
そんなわけで、遊子小・結出小の子どもたちは本文の大切なところだけを読んだり指で押さえたり、○で囲んだり線で結んだりといった作業を繰り返していきます。
そうすることで、大量の情報の中から必要なものを見つけ出し、確実に答えを見つけ出していったのです。
一度や二度やっただけで、この情報処理スキルを身に付けたとはいえないと思いますが、遊子小・結出小の子たちなら何度か練習する中で確実に身に付けられると思います。
大人になっても役に立つこの情報処理スキルを、しっかりと身に付けておくことをお勧めします。
■講話
子どもたちが下校した後、2校の教職員が集まって、椿原先生から90分間お話をうかがいました。
テーマは、「年度末から伸ばす全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた次年度準備、次年度の国語授業開きに備えるためのポイント」です。
2つのテーマとも、私たち教職員が授業力を高めることで、子どもたちに学力を付けていこうとするものです。
2校の教職員はときにうなずきながら、ときにメモをとりながら、濃密な時間を過ごしました。
全ては子どもたちのために!!
年間通じて御指導くださった椿原正和先生、本当にありがとうございました。
遊子小・結出小の教職員は、年度末まで全力で研修しています!